山梨県内の企業の広報活動について紹介する特別企画。
第四週目は、「(株)印傳屋上原勇七」様の広報活動についてお話を伺います。
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10年ほど前から広報のコンセプト作りを主に担当されてるということですが、主にどのようなコンセプトで広報活動をされてますか。
上原
会社の基本的な考え方として「私たちは印伝を通じて、自然に感謝し、お客様の幸せを願います。」と言うブランドアイデンティティがあります。商品への思いとか発信の仕方とかは全てこのアイデンティティに基づいて行っています。
Sense of Wonder | 印傳屋 INDEN-YA
http://www.inden-ya.co.jp/senseofwonder/
特設ページを作るほど、自然とひとを大事にする精神を発信している
県外でも印傳屋の印伝はよく見かけます。そういった全国展開はどういったアプローチで広報をされてますか。
上原
全国展開する時は新聞の全国紙を活用しています。 新聞はやはり信頼性が高いメディアなので 、ブランドイメージを出すには新聞が一番ですね。一方で、若い人向けの発信やコストパフォーマンスなどの面では、SNSに重点を置いています。
全国紙展開は年に何回ほどされていますか?
上原
年に2、3回ですね。
全国紙展開はコストもかなりかけられているかとは思いますが、逆に費用のかからないプレスリリースなどは何か活用されてますか。
上原
もちろん重要視しています。お金を出して出す広告はどちらかというと消費者には興味を感じてもらえないんです。マスコミが「記事にしたい」と思って取り上げてもらう方が企業に対する興味を持ってもらえるので、欠かすことはできません。
どういった事例でプレスリリースを出されてますか。
上原
2015年に印傳屋は、グッチ社とコラボレーションを行いました。とても話題性のある内容だったので是非記事にしてもらいたいと思いプレスリリースで周知し、沢山のメディアに来てもらえました。「話題性をいかに作るか?」という戦略を立てて、マスコミが取材したいと思ってもらえることがすごく大事なことです。ただし、ウケ狙いの内容ではなく、「印傳屋は信頼性のある企業である」と消費者に思ってもらえるような内容でなければならない、そこは注意しています。
上原さんが考える信頼性とはどのようなものですか。
上原
企業も社会貢献が求められている時代の中で、ボランティア活動なども大事ではありますが、「本業を通して社会貢献をしているか」という視点がすごく大事です。印伝を通じてお客様に幸せになってもらいたい、それが弊社が思う社会貢献であり、お客様との約束でもあります。この約束を守ることが信頼に繋がるものであると考えます。
YouTubeの動画も見させていただきましたが、確かに商品の宣伝ではなく、印傳屋という会社が地域にどのように根付いているのかが印象に残るような内容だと感じました
上原
そうですね。「広告を出して売れればいい」という考えはしていません。「売ろう売ろう」とすることはお客さんが一歩引いてしまいます。それよりも地域のこと、文化的なこと、そういったバックグラウンドの中できちんとお客様の心に響くものを表現することで、印傳屋のファンになってもらうように心掛けています。
歴史のある企業なので元々の知名度も充分にあるとは思いますが、それでもなお広報を重要視されていることがとても伝わってきました。
上原
ただ伝統だとか思いだけでお客様が興味を持ってくれるか、というと、そんなことはありません。やはり時代にあった話題性や商品を出していかないと当然飽きられてしまいます。
時代にあった話題性とは、具体的にはどのようなことですか。
上原
2012年から海外戦略として、海外向けの商品やパンフレットを作成してニューヨークを始めとする展示会を行ってきました。単なる日本の伝統企業ではなく、世界へチャレンジする姿勢をきちんと発信し続けてきました。海外でのビジネスでは、商品作りや発信の仕方が日本のやり方とは違ってくるので、日本の消費者にも新鮮に映るようになります。それによって、日本の若いお客様が増えましたね。年配向けのイメージから、若い人向けのイメージやグローバルなイメージが生まれたことによって、企業としての幅も広がりました。ブランディングという点で、意義あることだったなと感じています。
2012年以前は海外展開はされていなかったのでしょうか。
上原
行っていなかったです。ですから、大きな転換になりましたね。先ほどのグッチ社の件も、海外戦略が功を奏して先方から依頼が来てコラボレーションに至りました。
2019年度の海外展開用のパンフレット
今年に入って新型コロナウイルス感染拡大によって大きな影響を受けたかとは思いますが、これから先は広報活動にどのような変化があると考えていますか。
上原
これからは、本質を見極めようとする時代が来ると考えています。例えば、これまでは何がなんでも会社に出社することが重要だったのが、リモートワークの導入によって在宅でも仕事ができるようになり、「これまで重要だと思っていたことはなんだったんだ」と気付き、「本当に重要なものはなんなのか」「こうすればもっと良くなるんじゃないか」という本質をみんなが考え始めるようになり、今までやってきたことを見直すきっかけになったのではないかと思います。それはものを買うことも一緒です。安くものが手に入るようになったけれども質が悪かったりすぐ壊れたりすることがあります。それよりも多少高くてもよりよいものを愛着を持って大切に使ったり、環境のことを意識する企業の商品を選んだりするような時代になると思っています。消費者意識の変化ですね。これから企業はその変化を的確に捉え、広報していかなければならないと思います。
経済的打撃を受けたからこそ、安く済ませる方向に進むのではなく本当に価値のある物を大事にしなけれないけないということですね。
上原
これからの時代は、信用のある企業でないと生き残れないのではないかと思います。そのためには企業の価値をどう高めていくか、そのブランディングをしっかりと行い、消費者に発信していくことが重要だと思います。
本日は、ありがとうございました。